沈黙の境界線
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「ラテ、君にプレゼントだ。」
一週間以上、なんの音沙汰もなかった恭吾がなんの連絡もなしに私のもとへ訪れたかと思ったら
突然、たくさんの推理小説を押し付けるように私に手渡した。
メールさえもくれなかったこの数日、私がどれだけ淋しい思いをしていたのか、恭吾は少しも考えなかったのだろうか?
離れないでとか自分から口癖のように言うくせに、自分からは自由に私から離れていこうとする。
恭吾にはそんな勝手な面があることを今回はよく思い知らされた気分だ。
「この小説、どうしたの?」
袋の中に軽く10冊はあるだろう、同じ作者の本を一冊ずつ袋からだしていくと
「ラテも気に入るはずだ。だから読んでよ。」と、目を輝かせたかと思ったら、物語の全容を一冊、一冊語り始める。
それは、私も初めて見るような心底、嬉しそうな顔で。