沈黙の境界線
「私、恋愛小説しか読んだことないけど、恭吾のお薦めなら読んでみるよ。
ところで・・・
最近連絡くれなかったけど忙しかったの?」
恋人ではないけれど、それくらいのことは聞いても問題ないだろうと思って、何の気なしに聞くと、恭吾は口元だけ悲しく笑って小さな声で、うん。と頷いた。
その消え入りそうな笑顔の裏に何か隠されていることは間違いないだろう。
私にも言えないことなのかと、少しもの悲しい気分になったことを彼はきっと気付いたに違いない。
「そんなに俺のことが知りたい?」
からかうように聞いた彼に私はそっぽを向いて「別に」と呟くと
暫くの沈黙の後で恭吾は話の切り出しを選ぶように
独り言のように呟き始める。