沈黙の境界線
「生まれてきた理由が必要・・・?」
そう聞いた私に
「生まれてきた理由を考えずに済むラテはやっぱり俺なんかの何倍も幸せ者なんだろうな・・・」
そう言い、俯くと
右手だけ私に向かって伸ばす。
だから私は彼のとなりに寄り添い
その頭を優しく撫でると
視界の端に見えた
恭吾の首筋、襟元にギリギリ隠れる位置の傷を見つけた。
それはまるで何かを押し当てられたような火傷のように見えて
頭を撫でていた手を止めて
指先でそっとその傷に触れようとした時
驚いた顔をした恭吾が、一瞬、勢いよく片手で傷痕を覆い、身をひいたから
私も驚いて
慌てて手を後ろに引っ込めた。
「火傷みたいな怪我が・・・痛そうだなって思って・・・
ごめん。
嫌・・・だった?」
恐る恐る聞いた私を彼は目を見開いたまま見つめて
俯いたまま言葉を失った。