沈黙の境界線
「もう・・・痛くない。
この傷がなんのものなのか・・・ラテには分かる?」
ようやく話始めた彼に、私は首を傾げて見せた。
「たばこの火を押し付けられた傷だよ。」
苦笑いを浮かべる恭吾の言葉に、私は思わず両手で口を覆った。
誰に?
聞かなくても察しがついた。
「こんなの、小さい頃からよくあることなんだ。
母さんは俺が嫌いなんだよ。
俺が生まれるその前からずっと、母さんは俺が嫌いで。
でも、父さんと一緒になるために産みたくない俺を産んだんだ。」
無機質な瞳は感情を感じさせずに私をその瞳に映している。
かける言葉が見つからない私の前で
彼はゆっくり制服のボタンを外し
上着
Yシャツを脱ぎ捨てていくと
白いシャツをたくしあげて
無数の傷で埋め尽くされたその背中を私に見せた。
私よりも広くて大きな背中に
数えきれないほどの傷痕が
恭吾の悲しみを刻むように残されている。