沈黙の境界線
「あの女に俺という人間を認識させようと思うんだ。」
あの女とは恭吾の母親のことだ。
だけど、その後の話があまりにも抽象的で、私にはちゃんと理解することができなかった。
「つまり・・・どうするの?」
「あの女は俺を人間と思ってない。俺を自分の感情をぶつけるための人形としか思ってないんだ。」
私はあの日見た恭吾の背中の傷を思い出しながら頷く。
「俺が感情のある人間であることを思い知らせてやるんだ。」
「どうやって?」
「簡単なことだよ。
そんな簡単なことに今まで気付いていなかったんだ。」
妖しく笑みを浮かべたその表情があまりにも冷たくて、彼の言葉に寒気が走る。
それでも
恭吾を苦しめるその母親を私も許せなかった。
恭吾を手助けできるのは自分だけなんだと信じていた。