沈黙の境界線
携帯を片手に一階に下りてお母さんの様子を伺うと、私に気づいたお母さんはパッと顔をあげて涙を拭い何もなかったかのようにテレビに向き直る。
その様子が普通じゃないことくらいは私にもわかり、ついていたテレビにのニュースに目をやると、昨晩の事件が報道されていて、その内容に目を疑った。
私の通っていた塾の
しかもあの講師が通り魔にあい、重体だという。
「人通りの多い通りでの犯行にも関わらず目撃者は今のところ見つかっておりません。」
ニュースキャスターの言葉に、息が止まりそうだった。
しばらく立ち尽くしたまま呆然としていた私にお母さんはようやく声をかけた。
「確か・・・絢香の塾の先生よね・・・ひどいことがあるものだわ。
こんなニュース・・・今のあなたにはよくない。
忘れなさい。」
白々しい事を言いながらテレビを消したお母さんに何も言わずに部屋に戻り、携帯を確認すると
ようやく久しぶりに届いた恭吾からのメール。