恋した人は、漫画の住人
 私は黙ったまま。龍はくっ付いたままで芳沢麗華のいる8階についた。
 そして、803号室の前に立った。表札には“芳沢”と書いている。

「此処だよ。」

「うん、そうだね。で、さっさとチャイム押してとっとと帰ろっか。」

「まったく・・・緊張感がないんだから・・・」

「何事もフレンドリィだよ。」

「何か可笑しくない?」

 そして、私は803号室のチャイムを押した。

『はい、どちら様ですか?』

「あの、石原春とその兄の龍次です。」

 そう言うと、ドアが開いた。中から、髪が肩まである綺麗な女性が出てきた。

「こんにちは、私は芳沢麗華です。登美子さんから聞いて待っていました。どうぞ、入ってください。」

 そして、私と龍は彼女の指示どおり中に入った。
 彼女は龍の言ったように本当に一人暮らしらしい。靴は一人分しかない。ほかの人が入った形跡も無い。とても綺麗に整理された部屋だった。
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