私の最強冷酷彼氏様
玄関に立って家の中を見渡す。
お母さんが帰ってこなくなってから、何一つ変わっていない家。
『こらシノっ!はやくおきなさい!』
『シノ。シノにはお母さんがいるでしょ?』
『やっぱりシノは私の娘ね、一番かわいい!』
思い出すのはお母さんとの思い出。
朝起きれなくて、毎回怒りながら起こしてくれるお母さん。
一番辛いときに、泣いている私のそばで慰めてくれるお母さん。
初めてメイクをしたときに、そのシワのない顔で愛しそうに笑ったお母さん。
そんなお母さんの顔、シワひとつない綺麗な顔。
その顔には、いつの間にかシワができていて、体は痩せ細り、笑顔が消えて…
なのに私は、そんな大きな変化に気づくことが出来なかった
「お母さん…」
「お母さん!…」
「お母さんっ…」
「…お母さん」
何度読んでもお母さんが返事をしてくれることはなく、たった一人の空間にこだまする。