いけない!?同居生活


「あたしね、高校を卒業するまではまだ男の格好をしていたのよ」

「男の?・・・なんだか想像できない」

「ふふっ、そう?・・・あたし自身じゃなくて、あたしの肩書とかあたしに付きまとう環境に女がたくさん寄ってきた」




私は春さんの足の間に座り、抱きしめられる形で話を聞く。
肩書とか、環境とかはよくわからないけど、女の格好でもこんなに綺麗な春さんだから、男の姿でも人目を惹いたに違いない。




「寄ってきたのは、女だけじゃなかったけどね。どうにかしてあたしに取り入ろうとする大人もいた。そいつらの、瞳の奥の厭らしさや醜い欲望があたしは嫌いだったの。誰も信用できなかった」

「・・・」

「高校の時、ある年上の女が近づいてきた。本当は嫌だったけど、いろいろなしがらみがあって断れなくて・・・」



春さんの話すトーンが少しずつ落ちてくる。
きっと、辛い話なのだろう。




「春さん、無理に話さなくてもいいんですよ」




思わずそう言った私に、春さんは微笑んでまた話し出した。




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