ナイショの恋人は副社長!?
秘密
*
ヴォルフの元から去った優子は運良くタクシーを拾い、オフィスへと向かう。
そう遠くはない距離に、『きっと会える』と何度も胸に言い聞かせつつも、流れる景色を落ちつかない思いで眺めていた。
混雑していた道路状況から、オフィスの手前で降ろしてもらうと、再び優子は駆け出す。
オフィスに着いたが、午後六時半にもなれば、正面玄関は既に施錠されている。
裏口へと向かうも、しんとしていて敦志の姿はなかった。
(この時間に副社長室(うえ)に行くのは気が引けるし……)
連絡をとるにも、携帯をヴォルフに取られたままだ。
優子は為す術なく、初めの待ち合わせ場所である裏口を出たところでしゃがみこむ。
見上げると、曇り空。そのせいもあって、すでに辺りは暗くなり始めていた。
そんなどんよりとした雰囲気が、まるで今の自分の心のようで、余計に悲しくなる。
――『何を失うか――わかっている?』
ヴォルフの言葉が不意に浮かんで、優子は蹲って目をきつく閉じた。
(失うものなんて……)
ヴォルフを拒否した今、優子が失うものと言えば、純一の信用と自分の職かもしれない。
敦志はきっと、理解してくれるだろう。
そうは思っていても、敦志の足を引っ張ることには変わりないのだということに、優子は頭を抱えた。
(もっと、冷静になるべきだった……?)
目を閉じ、真っ暗な中で自分に問い掛ける。
今の仕事は好きだけど、何にも代えがたいと言える程ではないかもしれない。
仕事を失って、もし、次の職が見つからなかったら……。
そうなっても、父との確執がある以上、簡単には実家に帰ることは出来ない。
そんな時、頼れる程親しい友人もいない。
まして、彼氏なんて――。
ヴォルフの元から去った優子は運良くタクシーを拾い、オフィスへと向かう。
そう遠くはない距離に、『きっと会える』と何度も胸に言い聞かせつつも、流れる景色を落ちつかない思いで眺めていた。
混雑していた道路状況から、オフィスの手前で降ろしてもらうと、再び優子は駆け出す。
オフィスに着いたが、午後六時半にもなれば、正面玄関は既に施錠されている。
裏口へと向かうも、しんとしていて敦志の姿はなかった。
(この時間に副社長室(うえ)に行くのは気が引けるし……)
連絡をとるにも、携帯をヴォルフに取られたままだ。
優子は為す術なく、初めの待ち合わせ場所である裏口を出たところでしゃがみこむ。
見上げると、曇り空。そのせいもあって、すでに辺りは暗くなり始めていた。
そんなどんよりとした雰囲気が、まるで今の自分の心のようで、余計に悲しくなる。
――『何を失うか――わかっている?』
ヴォルフの言葉が不意に浮かんで、優子は蹲って目をきつく閉じた。
(失うものなんて……)
ヴォルフを拒否した今、優子が失うものと言えば、純一の信用と自分の職かもしれない。
敦志はきっと、理解してくれるだろう。
そうは思っていても、敦志の足を引っ張ることには変わりないのだということに、優子は頭を抱えた。
(もっと、冷静になるべきだった……?)
目を閉じ、真っ暗な中で自分に問い掛ける。
今の仕事は好きだけど、何にも代えがたいと言える程ではないかもしれない。
仕事を失って、もし、次の職が見つからなかったら……。
そうなっても、父との確執がある以上、簡単には実家に帰ることは出来ない。
そんな時、頼れる程親しい友人もいない。
まして、彼氏なんて――。