ナイショの恋人は副社長!?
「すぐに、彼女の自宅へ行ってみます。それと、一応、同部署の方に、最近変わった様子などなかったかを確認してみていただけますか?」
『承知いたしました』
電話を終えると、敦志はヴォルフのことなど構わずにその場から立ち去ろうとする。
しかし、敦志が歩き出すと同時に、ヴォルフもその後を追っていく。
「『オニザキ』と聞こえた。ユウコに関わる電話だったんだろう? 彼女がどうかしたのか?」
足早に歩く敦志を追いかけながら、ヴォルフは真剣な顔つきで質問する。
すると、敦志はしばらく口をきかなかったが、それでもついてくるヴォルフに根負けしてようやく開口した。
「彼女の代理と言う人物から、退職したいという連絡が来たらしい」
答えはしたものの、敦志は足を止めることをせず、ヴォルフを見もしない。
「代理って……誰なんだ?」
「そんなこと、オレが知るか」
「……なんだ。ユウコ本人からの連絡だったら、オレと一緒にドイツに行く気になったんだって思ったのに」
すでに敦志は、ヴォルフに対して私情を抑えることをやめている。
そのため、素っ気ない返答にもなるが、ヴォルフもまた、それを受け入れていて全く気にしていない。
飄々として、まだ優子を諦めていないような発言をするヴォルフに、敦志は内心苛立ちを覚える。
タクシーを捕まえた敦志は、同乗しようとするヴォルフを一瞥して言った。
「ここからは、我が社の問題ですので。どうぞ、お引き取り下さい」
よそよそしい口調で言い終え、タクシーのドアに手を添え、乗り込もうとした時に、ヴォルフが敦志の背中に問いかける。
「携帯(コレ)を直接返しに行きたいんだ。オレが彼女の家に行くことを、キミが拒否する権限はないよね?」
「な……っ」
「それに、なんだか話が普通じゃない。直接会うまでユウコが心配だ」
敦志は正面切って言われたことに、『心配しなくても大丈夫だ』と突っぱねることができなかった。
そのくらい、今の状況がまったく把握しきれていなく、敦志も困惑していたからだ。
不本意ながら、敦志はヴォルフの乗車を泣く泣く許すと、ふたりを乗せたタクシーは颯爽と優子のアパートへ向かって走り出した。
『承知いたしました』
電話を終えると、敦志はヴォルフのことなど構わずにその場から立ち去ろうとする。
しかし、敦志が歩き出すと同時に、ヴォルフもその後を追っていく。
「『オニザキ』と聞こえた。ユウコに関わる電話だったんだろう? 彼女がどうかしたのか?」
足早に歩く敦志を追いかけながら、ヴォルフは真剣な顔つきで質問する。
すると、敦志はしばらく口をきかなかったが、それでもついてくるヴォルフに根負けしてようやく開口した。
「彼女の代理と言う人物から、退職したいという連絡が来たらしい」
答えはしたものの、敦志は足を止めることをせず、ヴォルフを見もしない。
「代理って……誰なんだ?」
「そんなこと、オレが知るか」
「……なんだ。ユウコ本人からの連絡だったら、オレと一緒にドイツに行く気になったんだって思ったのに」
すでに敦志は、ヴォルフに対して私情を抑えることをやめている。
そのため、素っ気ない返答にもなるが、ヴォルフもまた、それを受け入れていて全く気にしていない。
飄々として、まだ優子を諦めていないような発言をするヴォルフに、敦志は内心苛立ちを覚える。
タクシーを捕まえた敦志は、同乗しようとするヴォルフを一瞥して言った。
「ここからは、我が社の問題ですので。どうぞ、お引き取り下さい」
よそよそしい口調で言い終え、タクシーのドアに手を添え、乗り込もうとした時に、ヴォルフが敦志の背中に問いかける。
「携帯(コレ)を直接返しに行きたいんだ。オレが彼女の家に行くことを、キミが拒否する権限はないよね?」
「な……っ」
「それに、なんだか話が普通じゃない。直接会うまでユウコが心配だ」
敦志は正面切って言われたことに、『心配しなくても大丈夫だ』と突っぱねることができなかった。
そのくらい、今の状況がまったく把握しきれていなく、敦志も困惑していたからだ。
不本意ながら、敦志はヴォルフの乗車を泣く泣く許すと、ふたりを乗せたタクシーは颯爽と優子のアパートへ向かって走り出した。