ナイショの恋人は副社長!?
 
芹沢の情報には、心の中で大きく頷き同調した。
 
敦志はつい最近、優子と関わったが、その短い間からでも彼女の真面目な性格は伝わってきていた。

優子のことを、詳しく説明できるようなことまでは知らない。
けれど、優子の人となりはわかっているつもりだ。

『ここからは余談ですが、鬼崎さんはとても仕事に熱心で、社内や取引先の人間の名前はもちろん、特徴などをメモするほどだったとお話されてました。仕事の覚えも早くて、いつでも真摯に向き合っていた、と』
 
さらに芹沢が重ねた言葉に、敦志は受付で背筋を伸ばして凛と立つ優子を思い出す。

『私も、そう感じます。以前、接待の席で一緒になりましたが、彼女は代理を立てて退職を届け出るような方ではないかと』
 
そして、最後に言われた内容は、完全に敦志も同じ考えだった。

「私もそう思います。ですので、この件は」
『一旦保留に。社内の人間にもまだなにも知らせません。インフォの今本さんには、口止めをしておきました。彼女はきっと大丈夫でしょう。社長にもそのように報告しておきます』
 
すべてを言わずとも、芹沢の対処の速さに敦志は驚き、彼女の優秀さに小さく笑いを零す。

「ありがとうございます。それでは、また何かありましたらすぐに連絡ください」
 
ほんの少し、気持ちに余裕が出てきた敦志は口元を僅かに緩め、礼を言って電話を切った。

(オレも、退職を希望してるだなんて信じられない)
 
ノートをぼんやりと見ながら優子を思い返し、ふと、芹沢の話が頭を過る。
 
手にあるノートには名前など記されていない。
敦志は、躊躇いながらもそっと表紙を捲ってみる。

「……これは」
「サオトメ。今の電話は秘書の彼女からか? 今さら情報を隠すことはしないでくれ」

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