ナイショの恋人は副社長!?
頭で考えるよりも先に、心が反応をしたという感じだった。
生まれて初めて、その願望を実際に口にした。
優子は言い終えてからハッと我に返り、口を手で押さえる。
ドクドクと心音を鳴らしながら仰ぎ見る敦志は、弓なりに口を上げ、確かに一度頷いた。
「生憎、娘の相手として認めるのは、根性のある強い奴だけだ」
ふたりのいい雰囲気に水を差すように口を挟んだのは、もちろん武徳。
すると、武徳に合図を送られた柾利は、被っていた黒い帽子をおもむろに脱ぐと、敦志の元へ歩み寄る。
目の前で足を止められた敦志は、スッと優子を自分の背に隠し、メガネを外した。
「優子さん。持っていていただけますか?」
「えっ……あ、でも!」
(防具もつけずに柾兄と組手をするなんて危険すぎる!)
敦志のメガネを受け取りながら戸惑う優子をよそに、敦志は焦る様子も見せずに柾利と向き合う。
そして、ゆっくりと握った拳を構えた。
集中した目つきに変わる敦志に、柾利もまた同様に構えると、互いに動かず数秒が経つ。
しんとした中、優子は敦志の背中を心配そうに見つめていた。
(こんなふうに巻き込みたくなくて、距離をとっていたのに……!)
優子が懸念していたことが、現実となって目の前で起こっている。
空手熱が尋常じゃない父親には、特に高校生の頃から振り回され、干渉されてきた。
進路や部活、そして、彼氏ができると決まって首を突っ込んでくる。
それらすべては、道場の跡取りのことだけを考えてという行動だ。
過干渉な父から逃れるべく、優子は実家を出たと言っても過言ではない。
「ほう。さすが、若くして上に立っているだけある。度胸はあるみたいだな」
武徳は一歩引いたところで、まるで高みの見物でもしているように腕を組んで呟く。
優子は嫌な動悸を感じながらも止めに入ることができず、敦志の背中を不安な気持ちで見つめていた。
その背中は柾利と比べ、小柄で線の細いものだが、どこか逞しさを感じる。
優子は祈るように預けられたメガネを両手で包み込むように握る。
(……副社長!)
生まれて初めて、その願望を実際に口にした。
優子は言い終えてからハッと我に返り、口を手で押さえる。
ドクドクと心音を鳴らしながら仰ぎ見る敦志は、弓なりに口を上げ、確かに一度頷いた。
「生憎、娘の相手として認めるのは、根性のある強い奴だけだ」
ふたりのいい雰囲気に水を差すように口を挟んだのは、もちろん武徳。
すると、武徳に合図を送られた柾利は、被っていた黒い帽子をおもむろに脱ぐと、敦志の元へ歩み寄る。
目の前で足を止められた敦志は、スッと優子を自分の背に隠し、メガネを外した。
「優子さん。持っていていただけますか?」
「えっ……あ、でも!」
(防具もつけずに柾兄と組手をするなんて危険すぎる!)
敦志のメガネを受け取りながら戸惑う優子をよそに、敦志は焦る様子も見せずに柾利と向き合う。
そして、ゆっくりと握った拳を構えた。
集中した目つきに変わる敦志に、柾利もまた同様に構えると、互いに動かず数秒が経つ。
しんとした中、優子は敦志の背中を心配そうに見つめていた。
(こんなふうに巻き込みたくなくて、距離をとっていたのに……!)
優子が懸念していたことが、現実となって目の前で起こっている。
空手熱が尋常じゃない父親には、特に高校生の頃から振り回され、干渉されてきた。
進路や部活、そして、彼氏ができると決まって首を突っ込んでくる。
それらすべては、道場の跡取りのことだけを考えてという行動だ。
過干渉な父から逃れるべく、優子は実家を出たと言っても過言ではない。
「ほう。さすが、若くして上に立っているだけある。度胸はあるみたいだな」
武徳は一歩引いたところで、まるで高みの見物でもしているように腕を組んで呟く。
優子は嫌な動悸を感じながらも止めに入ることができず、敦志の背中を不安な気持ちで見つめていた。
その背中は柾利と比べ、小柄で線の細いものだが、どこか逞しさを感じる。
優子は祈るように預けられたメガネを両手で包み込むように握る。
(……副社長!)