ナイショの恋人は副社長!?
お姫様(ヒロイン)
*
「ユウコ。これ」
優子の実家を後にし、ヴォルフの宿泊先に着いた時に優子に差し出される。
「あっ」
「躊躇うことなく携帯(コレ)を捨てて行く後ろ姿は、正直驚いたけど、カッコよかったよ」
ヴォルフが微笑み掛けると、優子は照れるように視線を下げた。
「カラテ道場とはね。どうりで、他の女の子とは違う魅力を持っていたわけだ」
ニッと口角を上げて優子に顔を近づけるヴォルフを、真っ先に警戒したのは敦志だ。
優子を隠すように背中へ回し、ヴォルフを静かに睨みつける。
「……本当に抜け目のない男だ」
「なんのことです?」
敦志が白々しく聞き返すと、ヴォルフは鼻から息を吐き、軽く首を横に振る。
「あの場面で、ドイツ語を発したのはオレへの牽制だとしか思えなかったが」
ヴォルフの言葉に、優子は今さら疑問に思う。
(言われてみれば、さっき道場で〝あの時〟だけドイツ語だった)
心を奪われるような敦志のセリフは、日本語ではなくドイツ語だった。
いろんなことで気が動転していた優子はそこまで気にしていなかったが、改めて考えると首を傾げてしまう。
「そう捉えられたなら、それで構いません」
「食えないヤツだ」
敦志を一瞥し、目を細めたヴォルフだが、すぐに清々しい顔つきをしていた。
敦志の陰にいた優子を見て、白い歯を覗かせた。
「じゃあね、ユウコ」
軽く手を挙げて、颯爽とホテルのロビーへと消えていく。
優子がその後ろ姿を見送っていると、ポンと肩に手を置かれた。
「少しだけ、歩いていかない?」
「は、はい」
「ユウコ。これ」
優子の実家を後にし、ヴォルフの宿泊先に着いた時に優子に差し出される。
「あっ」
「躊躇うことなく携帯(コレ)を捨てて行く後ろ姿は、正直驚いたけど、カッコよかったよ」
ヴォルフが微笑み掛けると、優子は照れるように視線を下げた。
「カラテ道場とはね。どうりで、他の女の子とは違う魅力を持っていたわけだ」
ニッと口角を上げて優子に顔を近づけるヴォルフを、真っ先に警戒したのは敦志だ。
優子を隠すように背中へ回し、ヴォルフを静かに睨みつける。
「……本当に抜け目のない男だ」
「なんのことです?」
敦志が白々しく聞き返すと、ヴォルフは鼻から息を吐き、軽く首を横に振る。
「あの場面で、ドイツ語を発したのはオレへの牽制だとしか思えなかったが」
ヴォルフの言葉に、優子は今さら疑問に思う。
(言われてみれば、さっき道場で〝あの時〟だけドイツ語だった)
心を奪われるような敦志のセリフは、日本語ではなくドイツ語だった。
いろんなことで気が動転していた優子はそこまで気にしていなかったが、改めて考えると首を傾げてしまう。
「そう捉えられたなら、それで構いません」
「食えないヤツだ」
敦志を一瞥し、目を細めたヴォルフだが、すぐに清々しい顔つきをしていた。
敦志の陰にいた優子を見て、白い歯を覗かせた。
「じゃあね、ユウコ」
軽く手を挙げて、颯爽とホテルのロビーへと消えていく。
優子がその後ろ姿を見送っていると、ポンと肩に手を置かれた。
「少しだけ、歩いていかない?」
「は、はい」