ナイショの恋人は副社長!?
「ごめん。中身を少し見てしまって……。だけど、これを見て、やっぱり手放したくないって再確認したから」
ノートを受け取ることも忘れ、差し出された手をゆっくり上へと辿っていく。
敦志の顔を見ると、口元に緩やかな弧を描き、柔らかい眼差しをしていた。
「道場の名前さえしっかり覚えていたら、今日はこんなに慌てることなんかなかったな。六歳の自分の浅はかさに気がつかされたよ」
(六歳の副社長……)
――『ある人を守りたい、と。守らなければと思ってきた』
敦志が道場で何気なく話していた言葉が脳裏に浮かぶ。
(そんな小さな頃から、そこまで大切に思える人がいるなんて……それを、今も継続しているような言い方だったような)
優子は自然と視線が下がり、ノートを見つめて軽く唇を噛んだ。
(もしかしたら、その人が『加奈子さん』という人なのかも)
空手を習って強くなっても、動じない精神力を身につけても、それが自信につながることは一度もなかった。
どちらかというと、優子は劣等感が強い人間なのかもしれない。
今も、容姿や性格などは何ひとつわからず、ただ『加奈子』という名前だけを知る相手に完全に負けた気持ちでいる。
「優子さん?」
敦志はいつまでもノートを受け取らず、さらには口を引き結んで動かない優子を心配そうに覗き込んで声を掛けた。
優子は、自分の気持ちをこのまま押し殺すべきか葛藤していた。
その時、ふと懐かしい言葉が頭に浮かぶ。
『真摯に向き合うべくは自分自身』
それは父の教えのひとつ。
さっき敦志がそれを口にしたことで、それをよく父から聞かされていた優子の記憶が蘇る。
(この気持ちを言わないと、私、強くなれない気がする)
そう思い、優子はスッと顔を上げた。心を決めた目は、いつもの迷いのない真っ直ぐな瞳だ。
「副社長」
ノートを受け取ることも忘れ、差し出された手をゆっくり上へと辿っていく。
敦志の顔を見ると、口元に緩やかな弧を描き、柔らかい眼差しをしていた。
「道場の名前さえしっかり覚えていたら、今日はこんなに慌てることなんかなかったな。六歳の自分の浅はかさに気がつかされたよ」
(六歳の副社長……)
――『ある人を守りたい、と。守らなければと思ってきた』
敦志が道場で何気なく話していた言葉が脳裏に浮かぶ。
(そんな小さな頃から、そこまで大切に思える人がいるなんて……それを、今も継続しているような言い方だったような)
優子は自然と視線が下がり、ノートを見つめて軽く唇を噛んだ。
(もしかしたら、その人が『加奈子さん』という人なのかも)
空手を習って強くなっても、動じない精神力を身につけても、それが自信につながることは一度もなかった。
どちらかというと、優子は劣等感が強い人間なのかもしれない。
今も、容姿や性格などは何ひとつわからず、ただ『加奈子』という名前だけを知る相手に完全に負けた気持ちでいる。
「優子さん?」
敦志はいつまでもノートを受け取らず、さらには口を引き結んで動かない優子を心配そうに覗き込んで声を掛けた。
優子は、自分の気持ちをこのまま押し殺すべきか葛藤していた。
その時、ふと懐かしい言葉が頭に浮かぶ。
『真摯に向き合うべくは自分自身』
それは父の教えのひとつ。
さっき敦志がそれを口にしたことで、それをよく父から聞かされていた優子の記憶が蘇る。
(この気持ちを言わないと、私、強くなれない気がする)
そう思い、優子はスッと顔を上げた。心を決めた目は、いつもの迷いのない真っ直ぐな瞳だ。
「副社長」