ナイショの恋人は副社長!?
ヴォルフとドリスが出国審査を終えて行ってしまうと、優子は別れ際に言われたドリスの言葉を思い出していた。
『アツシのお姫様はあなたよね、ユウコ。とっても頼もしいナイトで羨ましいわ』
(……本当のところ、まるで実感がないんだけどな)
前方で敦志と芹沢がなにやら話をしているのを見つめながら昨夜のことを思い返す。
夢にも思わなかった敦志からの告白が、まだ耳に残っている。
薄ら頬を染め、敦志の背中を見ていると、突然純一に話し掛けられて肩を上げた。
「鬼崎さん、だったかな。通常職務外のことなのに、色々すまなかった」
「えっ。い、いえ! 私なんて何も!」
「仕事外というついでで、ひとつだけいいか?」
「え……? は、はい」
(な、なんだろう……? 社長がわざわざ私に)
敦志ですら今でも緊張するというのに、遠くから見るだけの存在である社長と肩を並べて歩き、会話を交わしている現状に動揺する。
純一は普段と何ら変わらない様子で話し始めた。
「敦志から聞いたよ。俺たちの関係も知っているんだろう。だから、濁すことなく君に言える」
『敦志から聞いた』という出だしだけで、優子の心拍数は増すばかり。
けれど、自分に言いたいことはなんなのかがわからなくて、優子はひと言も発せずにいた。
緊張で手に汗をかきながら、そろりと隣にいる純一を窺ってみた。
すると、今まで思いもしなかったことを、不意に感じる。