ナイショの恋人は副社長!?
*
一階についたエレベーターから降りた敦志は、無心で廊下を歩く。
普段から、あまりエントランスの方は通らない。
今も、裏口の方へと足を向けた時に、後方から女性たちの会話が聞こえてきた。
「あれ、何人(なにじん)? 英語じゃなかったよね?」
「さー? ま、新人受付の研修みたいな感じで、いいんじゃない?」
「うわ。先輩ったら、オニ~!」
「オニは、あの子だってば」
三人は、先程優子を囲っていた女子社員だった。
ヴォルフが乱入してきたこともあり、興奮気味に言葉を交わす三人は、敦志の姿に気づくことなく行ってしまう。
つい足を止めた敦志は、女子社員が去って行った方向を見つめ、溜め息を吐く。
(やれやれ。人が多く集まると、必ずああいうことがあるんだな)
低俗な会話に嫌気がさす敦志は、目を背けるように踵を返す。
すると、数十メートル先に、目を引くふたりの姿を見つけた。
距離が遠く、さらには大きな窓から射し込む光で、ハッキリとは見えない。
しかし、背が高い人物の髪色に目を奪われる。
(金髪……ということは、もしかして)
敦志は瞬時にその人物がヴォルフだと考えると、方向転換をして足早に近づいて行く。
そして、そのふたりが明確になった時に声を上げた。
「鬼崎さん!」
「え? ふ、副社長!」
思いがけない人の登場に、優子は肩を上げて姿勢を正す。
敦志はヴォルフと対峙するように、優子の横へと立った。
「本日、お約束はなかったと思いますが」
内容は丁寧だが、その口調はどこか冷たく感じる。
敦志は、涙目にも見える優子の表情を見て、勝手にヴォルフが原因だと決めつけた。
メガネ越しに向けられる鋭い視線に、ヴォルフは嘲笑う。
一階についたエレベーターから降りた敦志は、無心で廊下を歩く。
普段から、あまりエントランスの方は通らない。
今も、裏口の方へと足を向けた時に、後方から女性たちの会話が聞こえてきた。
「あれ、何人(なにじん)? 英語じゃなかったよね?」
「さー? ま、新人受付の研修みたいな感じで、いいんじゃない?」
「うわ。先輩ったら、オニ~!」
「オニは、あの子だってば」
三人は、先程優子を囲っていた女子社員だった。
ヴォルフが乱入してきたこともあり、興奮気味に言葉を交わす三人は、敦志の姿に気づくことなく行ってしまう。
つい足を止めた敦志は、女子社員が去って行った方向を見つめ、溜め息を吐く。
(やれやれ。人が多く集まると、必ずああいうことがあるんだな)
低俗な会話に嫌気がさす敦志は、目を背けるように踵を返す。
すると、数十メートル先に、目を引くふたりの姿を見つけた。
距離が遠く、さらには大きな窓から射し込む光で、ハッキリとは見えない。
しかし、背が高い人物の髪色に目を奪われる。
(金髪……ということは、もしかして)
敦志は瞬時にその人物がヴォルフだと考えると、方向転換をして足早に近づいて行く。
そして、そのふたりが明確になった時に声を上げた。
「鬼崎さん!」
「え? ふ、副社長!」
思いがけない人の登場に、優子は肩を上げて姿勢を正す。
敦志はヴォルフと対峙するように、優子の横へと立った。
「本日、お約束はなかったと思いますが」
内容は丁寧だが、その口調はどこか冷たく感じる。
敦志は、涙目にも見える優子の表情を見て、勝手にヴォルフが原因だと決めつけた。
メガネ越しに向けられる鋭い視線に、ヴォルフは嘲笑う。