ナイショの恋人は副社長!?
「少し待っていてください。ご自宅まで送って行きます」
今一度、腕時計を確認した敦志が席を立つと、大きく見上げた優子がベッドから足を出して声を上げた。
「そ、そんな! いいです! ひとりで大丈夫ですよ! ほら!」
パンプスを履くと、スッと立ち上がって敦志に向けて微笑む。
好きな人に送り届けてもらうというこの状況は、もしかしたら他の女子ならば、喜んで受ける場面なのかもしれない。
ふたりきりになれるというのと、心配してくれているという特別感を喜ぶシチュエーション。
しかし、今の優子はそんなことよりも先に、敦志の足を引っ張りたくないということしかなかった。
心配や迷惑を掛けたくないという優子の気丈な行動と笑顔に、敦志は余計に放っておけなくなる。
今朝、顔を合わせ、言葉も交わしたはずなのに異変に気付けなかった。
それに加え、先程のヴォルフとのやりとりにも悶々としてしまっている。
昨日から、明らかにヴォルフの興味は優子に向いているということには気づいていた。
そのことが、どうにも敦志の頭から離れない。
(そのいつも見る笑顔の奥に、どんな本音が隠されているというんだ。その小さな体に、何を秘めてる……?)
優子の笑った顔を見れば見る程、心の影が気になって仕方がない。
「副社長に、そんなご面倒をこれ以上掛けられません」
「……そんなことを言わないで。こういう時は、頼っていいんです」
敦志は、目を伏せかけた優子の身体を支えるようにし、手を取った。
熱い眼差しを間近で向けられた優子は、勘違いをしてしまいそうになる。
(違う。これは業務上の心配で、特別な意味なんてない)
頭でそう言い聞かせてはいるものの、握られた手と、背中に添えられた感触が冷静さを奪っていく。
潤ませた瞳を敦志に向けると、敦志は眉を下げて小さく笑った。
「女性を守るために、男は強くあるんですから」
言われた言葉に、優子はときめきよりも別の感情が僅かに勝ってしまった。
どこか素直に喜べない表情を浮かべた優子は、俯いて敦志の手から離れる。
そして、きゅ、と意識的に口角を上げてから、改めて顔を上げた。
敦志は、新たに見る優子の顔が、新たに記憶に深く刻まれたのだった。
今一度、腕時計を確認した敦志が席を立つと、大きく見上げた優子がベッドから足を出して声を上げた。
「そ、そんな! いいです! ひとりで大丈夫ですよ! ほら!」
パンプスを履くと、スッと立ち上がって敦志に向けて微笑む。
好きな人に送り届けてもらうというこの状況は、もしかしたら他の女子ならば、喜んで受ける場面なのかもしれない。
ふたりきりになれるというのと、心配してくれているという特別感を喜ぶシチュエーション。
しかし、今の優子はそんなことよりも先に、敦志の足を引っ張りたくないということしかなかった。
心配や迷惑を掛けたくないという優子の気丈な行動と笑顔に、敦志は余計に放っておけなくなる。
今朝、顔を合わせ、言葉も交わしたはずなのに異変に気付けなかった。
それに加え、先程のヴォルフとのやりとりにも悶々としてしまっている。
昨日から、明らかにヴォルフの興味は優子に向いているということには気づいていた。
そのことが、どうにも敦志の頭から離れない。
(そのいつも見る笑顔の奥に、どんな本音が隠されているというんだ。その小さな体に、何を秘めてる……?)
優子の笑った顔を見れば見る程、心の影が気になって仕方がない。
「副社長に、そんなご面倒をこれ以上掛けられません」
「……そんなことを言わないで。こういう時は、頼っていいんです」
敦志は、目を伏せかけた優子の身体を支えるようにし、手を取った。
熱い眼差しを間近で向けられた優子は、勘違いをしてしまいそうになる。
(違う。これは業務上の心配で、特別な意味なんてない)
頭でそう言い聞かせてはいるものの、握られた手と、背中に添えられた感触が冷静さを奪っていく。
潤ませた瞳を敦志に向けると、敦志は眉を下げて小さく笑った。
「女性を守るために、男は強くあるんですから」
言われた言葉に、優子はときめきよりも別の感情が僅かに勝ってしまった。
どこか素直に喜べない表情を浮かべた優子は、俯いて敦志の手から離れる。
そして、きゅ、と意識的に口角を上げてから、改めて顔を上げた。
敦志は、新たに見る優子の顔が、新たに記憶に深く刻まれたのだった。