ナイショの恋人は副社長!?
＊

その頃、優子はヴォルフに連れ出されていた。

仕事が終わってすぐ向かった先は、街中にある女性に人気ブランド店、世界的に有名なアヴェク・トワ。

そこで優子の話も聞かず、ヴォルフの見立てた服を試着させられる。
何着か試着を繰り返し、淡いピンク色のワンピースを気に入ったヴォルフがそれを購入。
そして、優子にプレゼントした。

アヴェク・トワを後にすると、再びタクシーへと乗り込む。

どうやら、どこか食事する場所へと移動しているのだと優子が思った矢先、ヴォルフがタクシーを突然止めた。

言葉が通じない運転手は困惑した表情をミラー越しに見せていると、ヴォルフは優子に「待ってて」とひと言残し、降りて行く。

「お待たせ。これも、ユウコに」
　
白い歯を見せ、ドイツ語でさらりと自然に渡してきたものは、ピンク色のバラの花束だ。

「えっ。まさか、このためだけに？」
　
タクシーを止めた理由が、今、受け取った花束なのかと吃驚した優子は、思わず口走る。
すると、ヴォルフはニッコリと口角を上げた。

「ちょうど、花屋が目に留まったから。ドイツだったら、もっとスマートにデートをエスコート出来るんだけどな」
　
至近距離で青い瞳を向けられると、優子は逃げようもなくて困ってしまう。
　
さすがに美形な顔のヴォルフに熱い視線で攻められると、特別な感情を持っていなくても顔が赤くなる。
そこに、運転手が「出発してもいいですか？」と会話に割り込んできたことに、内心ホッとした。

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