複数人(ヤンデレ)に求愛されています
(3)
連れてこられたのは、物置部屋だった。
「な、なんて、ひどい。門番さんにも人権というのがあるのにっ」
「さすがにこの部屋が割り当てられたら、城から出て行くよ」
ワインや、果物が沢山入っているであろう木箱の陰に下ろされた。
イマダッ!な感じで行こうとすれば失敗。
「逃げちゃダメ。少し、ここで待っててよ。俺の部屋に招待するのに準備してくるから」
床に無造作に置かれている縄。本来なら、麻袋に入った小麦粉を密封させるために使うものだろうに、彼は慣れた手つきで私の手足を縛る。
「あ、もしや男性のベッド下にあると言われている物を片付けてーーんんっ」
布を噛ませられた。
「俺のベッド下には何もないよ。あるとすれば、枕元にフィーナの姿を映した水晶玉。毎月ごとに、王から渡される君のベストシーンなのだけど。俺のお気に入りは、よだれを垂らしながら寝ている無防備なシーンかな。今月はもうノルマを達成したから、寝言でむにゃむにゃな君が貰えるんだ」
「むむうー!」
「お金なんか貰っても嬉しくないよ。城の奴ら全員そうじゃない?俺たちが気に入らない王のもとで働く理由なんか、それしかないよ」
「むーんー!」
「え?布まで噛ませる理由?外してあげてもいいけど、うっかり別の奴が君の声を聞きつけてやってきてもいいなら」
「んー……、むむんっ」
「解放されたいがための常套句を持ち出すねぇ。すぐに戻ってくるから、その心配はないよ。仮にもそうなったとしても……、俺が片付けるから。汚いとは思わないよ、むしろ」
「むゆーっ」
「冗談冗談。どちらともその気はないのだから、君も変なこと考えないように」
「むー、むー」
「分かった分かった。今日の晩ご飯はカレーにするから、大人しくね」
「むんんっ」
「早口言葉?ええと、フィーナ大好きフィーナ大好きフィーナ大好き」
「んーっ。むんんむ、むゆゆっん、むーむむー!」
「言えていない言えていないって」
まずい、何だか楽しくなってきた。
話せない状態でどこまで伝わるか試してみたけど、まさかここまで伝わるとは。
次は、しりとりに挑戦しようとしたところで、門番さんは立ち上がる。