複数人(ヤンデレ)に求愛されています

「……本物以上に、俺を好きになってもらえないか?どんな料理でも作ってみせるから」

「……」

「困ったように笑わないでよ。切なくなる」

コックさんの気持ちを受け止めてあげられない。でも、それを直接伝えることが出来ないのは彼と同じ顔で泣こうとしているから。

言葉が出ず、「もうやめましょうか」とお開きを求めるも、コックさんは諦めてはくれない。

「王と同じほど好きなんだ、この程度で諦めるわけがないしーーどんなことをしても、君が欲しいと願ってしまう」

強引に。されど、愛しそうに体を撫でる手。抵抗しようとし、コックさんが耳元で囁く。

「ケーキ、たくさん食べてくれたね。嬉しいよ、俺が一から全部、君を思いながらーーこうなることを想像しながら作った物を、君は食べてくれた」

食べたの言葉を反芻し、意味深な印象を与える。

クラビスさんは美味しいものをよく作ってくれる。けど、この夢を見る前、クラビスさんは料理にこっそりとーー

「な、何か、入ってましたか」

「フィーナが、ものすごく喜んでくれる隠し味を少々」

「どういう意味でーー」

「もう、実感出来ているんじゃない。体、凄く熱い。火傷しそうだ。指から舌まで、触れる場所ぜんぶ」

体中が熱を持つ。まさかそんなと混乱していれば、追い討ちかけるように額に手を置かれた。

「頭、沸騰しすぎて壊れかかってない?もう、俺のことしか考えられなくなったかな」

暗示さながらに、頭までもクラクラしてきた。

「なんてものを、混ぜているん、ですか」


まずい、コックさんにされていることも相まって、本当にろれつが回らなくなってきた。

「たくさん混ぜたから、美味しく出来たようなものだけど」

今時の媚薬は、ケーキの材料にもなってしまうのか。逃げようとうつ伏せになり、腕で進もうとするがあえなく捕まった。

< 14 / 28 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop