複数人(ヤンデレ)に求愛されています

「あれ、普通に喋れてますよね、これ!」

体は熱いままだけど、よくよく考えればクラビスさんのそっくりさんにこういったことをされれば、恥ずかしくて血液も沸騰すること。

因みにながら、早口言葉をする。パーフェクトだ。

「そ、それじゃあ、いったい何の薬を混ぜたのですか」

「何の薬だと思ったのか知りたいんだけど。フィーナの口からきちんと」

私の考えなど丸わかりで、その上で弄んだコックさんだった。

「そう考えるようにわざと仕向ましたねっ」

「本当のことしか言ってないよ。フィーナが喜んでくれるものーー隠し味は、俺の愛情だよ。溢れんばかりの愛を形にした結果で、こんな展開になった時、勘違いして顔を真っ赤にさせる君が見てみたかった」

「悪意の塊じゃないですかあぁっ」

このぉと、生クリーム攻撃。
口元ヒット、舐められて終わり。

「今度はこっちで食べたいな」

私の口元にも生クリーム攻撃をされた。舐める前に、コックさんの舌に絡め取られる。

「作るのもいいけど。今度は君の体にデコレーションをして、時間をかけてじっくり食べていきたい気持ちになる」

「体がベトベトになるので嫌です」

「俺の唾液で?」

「クリームの段階で悲惨ですからっ。というか、返して下さいよ!」

奪い返そうとすれば、ポケットにしまわれる。悪ふざけにもほどがあると、本気で怒ろうとした時ーー廊下から悲鳴が聞こえた。

「うわー。今日は一段と機嫌が悪いな」

透視能力なくとも、廊下での出来事が分かっているかのようなコックさんは机の下を指差す。

「楽しみたいけど、邪魔が来た。隠れていた方がいいよ。“あれ”に見つかると、さすがのフィーナも泣いちゃう羽目になるから」

「今もまさに恥ずかしさから泣けますがっ」

「ごめんごめん。“あれ”が行ったらすぐにでも返すよ。履く時間もないだろうし、ほら」

早くと言われるがままにテーブルの下へ。コックさんが上からテーブルクロスをかけてくれた。

「絶対に、“あれ”には見つかっちゃいけないよ?」

大人しくしていて、と外の光景が遮断され、厨房の扉を大仰に開く音がした。

身を縮こませる。何が来たんだと耳を澄ませば。

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