複数人(ヤンデレ)に求愛されています
ものすごく病んでらっしゃるうううううぅ!
え、ええぇっ、ど、どうされたのですか、宰相さん!クラビスさんでもそこまで酷くはならないというのにっ!だ、誰かお医者さまを!多分私が特効薬なのでしょうが、もう取り返しのつかないところまで来ているので第三者の助けをー!と、心で叫ぶしかない。
机を引っ掻いているのか、がりがりの音が大きくなっていく。爪が剥がれてしまわないか心配だ。
コックさんの戻りを待つしかないのだけど、まだ来ない。
「フィーナ、どこに、フィーナ」
がりがり。
「フィーナフィーナ……!」
がりがりがり。
「フィーナ!フィーナ!」
がりがりがりがりがりがりがりがり。
い、痛いっ、爪がっ。私の爪まで痛くなってくる。
フィーナしか言わなくなりつつある宰相さん。返事をしたいけど、さすがにこの愛は受け止めきれない。
何せ、彼は宰相さん。私が受け止めきれるのはクラビスさんからの愛だけだ。
半端な優しさは却って人を傷つけてしまう。気づかれないように、口に置く手に力を込めた。このまま時が過ぎるのを待とうとしーー
「どこなんだ。今度は、伝説のーー黄金に輝くゲノゲさんを探しに行くと脱走して……!」