複数人(ヤンデレ)に求愛されています
大好きな彼ーークラビスさんに愛されるのは嬉しい。手を繋いだり、抱きしめられたり、添い寝してもらったり。それは幸せだ。
けれどクラビスさんの愛し方はその程度のものじゃないとは、24時間片時も離れず、隙さえあればキスしようとすることから十分理解している。
何よりも、
「お、フィー!なに、焼いてんだ!」
と、村一番の力持ち青年が私に話しかけただけで、青年をゴキブリに変えてしまう魔法を行使する極端な彼が100人いたところで血みどろの戦争が起きることしか想像出来ない。
「図々しい。俺の大切な恋人のアップルパイが食べれると思っているのか。そんなに食べたければ、食わしてやろうか。ゴキブリとなったその腹を捌いて詰め込んでやろう」
「いいから、戻して下さいよっ」
言えば、きちんと戻してくれる彼だけど、事ある度に私に近づく男性を害するのはやめてほしいところだ。
きょとんとした様子の力持ち青年には、後で出来たら届けますからーと言って撤退してもらう。
「そんなに嫉妬深いのに、いくら自身でも、他の男性と私がそんな関係になってもいいのですか」
「……」
それもそうだなと言われるまで気づかなかったのか、考える彼。
沈黙している内に、コンニチハーと綿毛が飛んできた。
眠たそうな三つ目のモンスター、ゲノゲさんだ。甘い匂いにつられてやってきたのだろう。アップルパイが出来たので、一切れ渡せば美味しそうに食べてくれる。
どうせなら、100匹のゲノゲ(綿毛)さんに囲まれて、そのままふわふわと眠ってしまいたいのだけど、そんなことを言えばゲノゲさんが彼の手によって絶滅されてしまうので口を閉じておく。
「確かに、姿形、心や性格までも同じ奴がいたとしても、そいつが君といつもの俺のような行為をするのは許せないな」
彼にもアップルパイを渡せば、パクリと食べてくれる。
「一人でいいのですよ、愛する人は」
彼が食べていたものを横から貰う。
あれ、少し甘すぎたかも。
「俺も生涯愛するのは君しかいない。だからこそ、君の全てが欲しいし、全てを見たいんだ」
人の顔を赤くさせるのが得意な人だった。頬に食べ残しでもついていたか、己が唇でキスをするように取られる。
「100人のあなたに、もみくちゃにされたら、身が持ちませんよ」
「失神するほど、よろこぶ君も見てみたい」
さらりと、鳥肌が立つことを言われてしまった。
「え、ええー。や、やめましょうよ、そういうのは」
「じゃあ、途中まで試そう。ダメならダメと言えばやめるし、続けて欲しいならそのまま身を預けてくれればいい」
「最初からダメです!第一、そんな夢を見ることもありませんし、私の夢をあなたが見ることなんて出来ない」