複数人(ヤンデレ)に求愛されています

(4)

近いほど、遠くに感じられる。
手が届きそうで届かない距離。

一生、自身の物にならないと分かっていてもその近い距離から離れられず、“近いまま”たどり着くことがない日々を彼は送ってきたのだろう。

宰相という、言うならば、二番目の役をこなしてきた彼はもはや限界だった。

一番二番の数字で彼女の愛は割り当てられない。

唯一無二。彼女にとっての愛情は全て、たった一人の男にしか注がれず、他全ては情にすぎない。

それにいち早く気付いたのは、誰よりもーーその他大勢の中でより近く見ていた彼だった。だからこそ、認めたくなかった。必死になり躍起になり、自棄を起こす。


“近いまま”の距離でも唯一無二になる場所に、たどり着く。

この、彼と彼女しか存在しない、牢獄で。

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