複数人(ヤンデレ)に求愛されています
(2)
「チートさん過ぎるにも程があります!」
ガバッと起き上がりと共に、おはようではなく別の言葉が出てきてしまった。
寝覚めにツッコミをしてしまうなんてと、辺りを見回す。
「……あれ?村はずれじゃないですか」
見覚えある景色に遠方には見知った建物。
寝る前の説明からして、ここは夢の世界だと思ったのだけど。むにーと頬を伸ばせば痛い。
「もしや、凄まじいことをされて記憶から消されているのか……」
もう既に体験済みで、起きた瞬間に夢でのことを忘れているとしたらーーまずい、かなり寒気が。
ともあれ、24時間も寝てしまっていたなんて。家のことが気になる。女帝属性を持つ母が帰ってきていたら、一日で家は汚れてしまうからだった。
汚れていませんようにと立ち上がり、家に向かう。
くたびれたログハウスたる我が家。
ただいまーと言いたくなる我が家なのだけど、言わずに固まってしまった。
第一印象は花屋敷。
質素なログハウスのあちこちに派手な色の花束が沢山置かれてあり。
「フィーナ!出てきてくれないか!」
「フィーナ、今日も綺麗な花を持ってきたんだ!」
「フィーナ、今日こそ俺の想いを受け取ってほしい!」
家の周辺に群れる黒い集団は、みんながみんな同じ顔。
「フィーナ、俺と結婚してくれ!」
それらが全て、各々の愛を語っていたのだから、意識が遠のく思いでもあった。