複数人(ヤンデレ)に求愛されています
「う、わー。どうして、こんな言葉にするのも恥ずかしい名前を。せめて、白銀の月下城とか、神々の黄昏城とか、ダークザダークネス城とか、そんなとてつもなくカッコイい名前にしなかったのでしょうか」
「どっちもドッチー」
よく分からないことを言うチュウノゲさんを引き連れて、門の前まで行く。
鍵はかかっていなく、簡単に入れた。
不用心なと思えど、すぐそこに門番がいたのだから、不用心だったのは自分かと後悔してしまう。
「あれ、フィーナ」
「人違いです」
「チガイデス」
「いやいや、間違いなくフィーナ」
チュウノゲさんのフォローがあってもごまかしきれなかった。
騎士の格好をしている彼の顔もクラビスさん。本物でないのは、話ながら直感で分かってしまう。
「相変わらず、フィーナは可愛いなぁ」
頬ずりしてくる彼から距離を取る。
やっていることは紛れもなく彼だけど、やはり何か違う。
「えっと、偽物さん?」
「傷つく傷つく。まあ、それであっているんだけど。本物ーー王と変わりなく、俺もフィーナが好きだよ」
「えっ、クラビスさん、王様になっているんですかっ!」
お城にいるからもしやと思っていたけど、なんて彼らしいポジションにいるんだ!
「そうそう。俺たちの王様。俺は門番ね。ーーって、まあだ警戒してる。大丈夫だよ、取って食べたりなんかしないから」
「いえ。つい先ほど、食用モンスター気分を味わいまして」
「ああ、なるほど。村に行ったのか」
空気読める人どころか、私の思っていること読める彼は説明なしでも察してくれる。
「もうしばらくは近づかない方がいいと思うよ。何せ、『フィーナは俺のお嫁さん村』連中の平和は壊れてしまったのだから」
「だからどうして、『全ての原点たる村』とか『豊穣の神が微笑みし地』とか『シャイニングセイント』とか、惚れ惚れするような名前にしないのですか」
「どっちもドッチー」
チュウノゲさんの口癖を聞きつつ、彼は続けた。
「フィーナがそう呼びたいならそれでいいんじゃない?この世界じゃ、王というよりも君が法律だし」
「私が法律なら、世界平和を真っ先に上げるのですが」