風を浴びて
待ち人
あの人はまだ夢の中で…


目覚めるときを…


私は待ち続ける…


通い慣れた病室。いつも同じ時間。1日も欠かすことなく…もう2年が過ぎた。

気付けばもう32になる。あれから…

目の前で眠るこの人の時間も、私の時間も、あの日から止まったままだ。


「もう2年ですよ。そろそろ目を覚ましませんか?」

「…」

「…」

「…」

「ねぇ…」

「…」

「いつまで待たせるの?」


当然のように何も答えることがないその人の手の甲に、涙が一粒…


由奈は病室を出た。病室の前の"石橋 由宇"の名前にため息が漏れる。


「大丈夫ですか?」


いつも声をかけてくれる看護婦さんは、とても心配そうにしていた。


「あ、やだ、ごめんなさい!大丈夫ですよ!仕事が忙しいせいかな…」

「毎日来てくださってますしね。石橋さんのお母さんも申し訳ないって…」

「そうですか…あの、よろしくお願いします」


そう言って、由奈は深々と頭を下げた。
看護婦さんは慌てながら、由奈に顔を上げるように言った。
由奈が立ち去ると、入れ替わるようにもう一人の看護婦さんが歩いてきた。


「由奈さん、どうしたの?」

「あ、いえ…何か疲れてたみたいで」

「そっか」

「初めて由奈さんのあんな顔見ました」

「いつも笑顔でいるから周りも気付きにくいけど、実際のところ由奈さんのストレスは半端ないわよ。ましてや、2年もこの状況が続いてるんだから」

「そうですよね…」


二人の足音が、廊下に響いた。







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