風を浴びて
次の日由奈が病院にいくと、少しむくんだ顔の二人がこっちを見て笑っていた。


「あ!由奈さん、こんにちは!」

「こんにちは。やっぱり腫れちゃってますねww」

「そうなんですよ…ほんと朝起きてショックで…」

「由奈さん、泣いてたわりに全然ですね!いーなぁ…」

「これでも、朝化粧のりが悪くて大変でしたよ」

「えー、すごい綺麗ですよ!」

「そうそう!いつもと変わらない」

「あはは、ありがとうございます。じゃぁちょっと覗いてきますね」

「ごゆっくり」


由奈が歩きなれた廊下をぬけ、エレベーターに乗り込む。いつもの二階を押し、エレベーターが到着すると、すれ違い様に白衣を着た見慣れない男が乗り込んできた。
由奈は少し会釈すると、そのままエレベーターを降り廊下の突き当たりの病室へ入った。

由宇は目を覚ます様子もなく、いつもと変わらない。由奈が横に座り手を握ると手の温もりが伝わってくる。

これでやっと由宇がいることを実感する。


「由宇…元気にしてた?」

「…」

「昨日はね、いつもの看護婦さんたちと飲みにいってきたよ」

「…」

「由宇のこと、私たちのこと、すごく考えてくれてるよ。私嬉しくて子供みたいに泣いちゃった」

「…」

「由宇…私、弱音はいたりしないよ。みんな頑張ってくれてるんだもん。諦めるとかできないよね」

「…」

「…だから…由宇も頑張ろうね…」


そう言うと、由奈はにっこり笑った。
由宇の額に手をあて帰ることだけ告げると、由奈は病室を出た。

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