不機嫌ウイルス
「え、お、おい!」
少しよろけた私を晴人は支えた。
「つーか熱あんじゃん!顔真っ赤だし」
晴人の大きな手が私のおでこを包む。
「ったくお前は五十嵐なんかの風邪うつされやがって」
ほらね、こんな時でさえ優しい言葉のひとつも言ってくれない。いつもお前お前って、たまには名前で呼んでくれてもいいじゃん。
熱あるんだから心配してくれてもいいじゃん……
もう嫌だ。もう限界。
男は星の数ほど居るんだし晴人だけじゃない。
私だけ頑張ってひとりで空回りしてバカみたい。
私の事を想ってくれてないならもう何も望まない。優しくて私だけを見てくれる人はきっとどこかに………
「気に食わねぇ」
晴人は不機嫌にそう言って私にキスをした。