不機嫌ウイルス



「え、お、おい!」

少しよろけた私を晴人は支えた。


「つーか熱あんじゃん!顔真っ赤だし」

晴人の大きな手が私のおでこを包む。


「ったくお前は五十嵐なんかの風邪うつされやがって」


ほらね、こんな時でさえ優しい言葉のひとつも言ってくれない。いつもお前お前って、たまには名前で呼んでくれてもいいじゃん。

熱あるんだから心配してくれてもいいじゃん……


もう嫌だ。もう限界。


男は星の数ほど居るんだし晴人だけじゃない。

私だけ頑張ってひとりで空回りしてバカみたい。

私の事を想ってくれてないならもう何も望まない。優しくて私だけを見てくれる人はきっとどこかに………


「気に食わねぇ」

晴人は不機嫌にそう言って私にキスをした。


< 9 / 13 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop