トイレには…


話を聞き終えた千尋は、涙目になっていた。


怖い話はあのトイレの一件以来大の苦手になり、一人では聞けないため、いつもは興味なさそうに聞く啓人にしがみついていた。しかし、今回は部屋に二人しかいないうえ、しがみついている啓人自身が話し手だった。


千尋にとって、怖い話が大の苦手であることを知っているにもかかわらず、啓人はそれがそれは怖そうに話した。声の調子や間のあけかた、そういったことが非常に上手いのである。


よって、下手なホラー漫画や小説よりも恐怖を感じることとなった。もはや気分は最悪である。


涙目の千尋を見てやりすぎたと悟り、焦って声をかけようとした啓人よりも先に、


「啓人のバカ!!大嫌い!」


千尋が宣言し、離れようとする。千尋の大嫌い、にショックを受けながら、啓人は腕を伸ばし千尋を引き留める。


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