トイレには…
そもそも、部活のない小学生がこんな暗くなる時間帯に小学校にいたのには、理由があった。
書初めの居残り練習である。といっても、高校などの補習のように残されているのではない。
年に一回の書初めの展覧会に出品するためだ。この学校では、作品を出品する生徒達が数人放課後を使い、教師
指導のもと書道に明け暮れる。
千尋も百合も、通う場所は違うものの書道教室にかよっていた。そのため毎年選ばれ、幼稚園来からの友人でも
ある二人は、この時期は一緒に帰っていた。
この日も、書初めの練習があった。普段は帰りの会が終わってから練習する教室に行くのだが、今日に限って掃
除が長引き開始時間が間近に迫っていた。
そして、いつもは書初めのセットと共に持って行っていた、ランドセルや荷物を教室に置いていった。後で取り
にくればいい、そんな気持ちが後に恐怖に変わるとも知らずに―――