過保護な彼に愛されすぎてます。
そのころからだ。
郁巳くんが、私の隣を、執拗に独占するようになったのは。
マンションにつき、エレベーターで五階にあがる。
五階にあるのは八部屋で、私の部屋は奥から二番目だった。そして、一番奥が郁巳くんの部屋だ。
私が就職を期にひとり暮らしを始めると言ったら、郁巳くんは大きなショックを受けたように真顔になり、すぐに『じゃあ俺も』と言った。
『え、でも……』と戸惑う暇もなく、部屋探しは任せて欲しいと言われ、その二週間後案内されたのがこのマンションだ。
私の就職先から近くて、徒歩で十五分ほどの距離だった。
部屋はワンルームだけど、充分な広さがあり、まだ新しい。
そのわりに、駅まで距離があるからか、家賃は私の希望した範囲内に収まっていた。
『俺、モデルの仕事してるから結構顔広くてさ。ひとり暮らししたいんだけどって知り合いに聞いてみたら、いくつも見つけてくれた。
他にもいいところはあったんだけど、隣同士で借りたかったからここにした。どう? 気に入った?』
満面の笑みで聞く郁巳くんに『またお隣さん……』と呟くと、嬉しそうな声で『奈央ちゃんの隣は俺って決まってるからね』と返されて……そのとき、なにか引っかかるものを感じたのは、まだ覚えている。
鍵を開けて中に入ると、すぐに部屋が広がり、右奥が対面式キッチン。つきあたりのドアの向こうが洗面所とお風呂。
部屋の左側は一面クローゼットになっているから、収納スペースは充分すぎるほどで、おかげで部屋が散らからずにすんでいる。
鞄を置き、洗面所に向かう。それから着替えを済ませてから、鍵を持って外に出ると、ちょうど奥の玄関が開いたところだった。
時間は、十九時四十分。
顔を出した郁巳くんが、私を確認するなり目を細めた。