過保護な彼に愛されすぎてます。
eight
大根おろしと大葉の乗ったハンバーグを一口食べ「おいしい」と言うと、郁巳くんは嬉しそうに顔をほころばせた。
「よかった」
「郁巳くんって、料理上手だよね。社食とかより全然おいしい」
醤油かポン酢、どちらをかけるか聞かれてポン酢と答えたけど、正解だった。
肉汁たっぷりだけど、後味はすっきりとしていておいしい。
ハンバーグの乗ったお皿の隅には、トマトとポテトサラダが添えられている。
お味噌汁の具は私の好きななめことお豆腐だった。
炊かれたご飯も、少しかためで、これも私の好みだ。
「愛情こもってるからねー。でも、奈央ちゃんのご飯もおいしいけど」
郁巳くんのお皿には、私のより倍くらい大きいハンバーグが乗っている。
それを箸で切りながら、郁巳くんが私を見て微笑む。
「このあいだ作ってくれたカレー、また作ってよ」
「市販のルー使った普通のカレーだよ」
「俺にとっては、奈央ちゃんが作ったってだけで特別だからね」
にっこりと、モデルスマイルを向けてくる郁巳くんがパチンとウインクするから、すっと目を逸らしお味噌汁の入ったお椀を口につける。
「うさんくさい」
「ええー、こないだカメラマンさんに〝不破くんウインク上手だね〟って褒められたのにっ」
「雑誌に載ってると別になにも思わないけど、実際目の前でされると相当うっとうしい」
「雑誌に載っててもなにも思われてないとか地味にショック……俺いつも、奈央ちゃんがカッコいいと思ってくれるといいなと思いながらやってるのに……」
くすん、と聞こえてきそうなほどに肩を落とす郁巳くんを横目に、ハンバーグを食べる。
ショックに打ちひしがれていてもやっぱり綺麗な横顔を眺めながら、やれやれと思い口を開いた。
「カッコいいと思ってないとは言ってないけど」
過剰反応して「えっ」と声を出し顔を上げた郁巳くんが目を輝かせるから、思わず笑みがこぼれてしまった。
周りからあれだけ評価されているくせに、なんで今更私の言葉ひとつでそんな反応をするのか、おもしろくなってしまう。