過保護な彼に愛されすぎてます。


「カメラマンさんにも褒められたんでしょ? それに、郁巳くんのことカッコいいって言ってるひとなんてそこらじゅうにいるよ。
ファンレターだってすごいって雑誌に書いてあった……」
「ああ、そんなの意味ないし」

かぶさった言葉があまりにピシャリと言い切るから黙ると、郁巳くんはまぶしいほどの笑みを浮かべて言う。

「他のヤツらにどんだけ褒められても意味ねぇもん。俺は、奈央ちゃんだけカッコいいって思ってくれたらそれでいい」

本当に、心の底からそう思ってるみたいな笑顔をじっと見つめ返しながら……過去のことを思い出していた。


中学、郁巳くんはたくさんの告白をされていたのに、その全部を断った。

『なんで?』と聞いた私に、郁巳くんは笑いながらも、どこか寂しそうに『結局、俺の外見目当てで近づいてくるヤツばっか』と答えた。

声変わりしてすっかり低くなった声。
それなのに、ちいさかった頃のことを思い出させるような、拗ねた口調だった。

『そのうち、郁巳くんの外側だけじゃなくて、中まで見て好きになってくれる人が現れて、そしたら郁巳くんも寂しくなくなるよ』

励ましてあげたくて言った言葉を聞いた郁巳くんは、私をじっと見つめたあと聞いた。

『じゃあ、それまで奈央ちゃん、傍にいてくれる?』
『うん。幼なじみだもん』

たぶん……郁巳くんのなかでは、その約束がまだ現在進行形なんだろう。

お昼休み、吉原さんにはうまく説明できなかったけれど、郁巳くんと私の関係は、そんな事情もあって少し歪だ。

これから先、郁巳くんの傷がきちんと癒えるまでは、歪なまんまなんだと思う。


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