過保護な彼に愛されすぎてます。
seven
「うわーっ、ありがとう!」
高校時代から友達の真美ちゃんが、嬉しそうに言う。
真美ちゃんが持っているのは色紙。そこに書いてあるのは、郁巳くんのサインだった。
一ヵ月くらい前に会ったときに頼まれたから、郁巳くんにお願いしてあらかじめもらっておいたモノだ。
久しぶりに私の部屋に遊びにきてくれた真美ちゃんは、色紙を紙袋にそっとしまいながら笑みをこぼした。
「妹が大ファンでね。もう部屋とかすごいんだよ。どの壁にもポスターが貼ってあるから、どこ見ても不破くんと目が合う感じ」
「それは……結構うっとうしいね」
視線だけでもうるさそうだな、と思い言うと、真美ちゃんが「相変わらずだね」と笑う。
「不破君はあんなに健気に奈央のこと追いかけてるのに、奈央ってばいつも冷たいんだもん。さすがに不破くんに同情する」
「小さいころからずっとあんな感じだし、郁巳くんも気にしてないから。あ、でも、住所とかそういうのは妹さんには秘密に……」
失礼かな、と思いながらも、一応お願いしかけたところで、真美ちゃんは「わかってるって」と明るく言う。
「迷惑はかけないから安心して。有名人だもんね」
ニカッと笑う真美ちゃんに「ありがとう」とお礼を言うと、「こちらこそ」と返された。
「でもさ、いいよね。有名人が幼なじみなんて」
真美ちゃんが、カフェオレを飲みながら言う。
ローテーブルの上に置いてあるのは、コーヒーショップでテイクアウトしたカフェオレと、ドーナツ。
両方とも真美ちゃんが買ってきてくれたものだった。
真美ちゃんは、保険の営業の仕事をしていて、今日も仕事らしい。
『お昼休みがてら寄るねー』と言われて、インターホンが鳴ったのは十四時。忙しそうだなぁと思う。
大量のドーナツは、真美ちゃんのお昼ご飯も兼ねての差し入れだった。