過保護な彼に愛されすぎてます。


「そうだね」
「そのなかの誰かと恋に堕ちちゃったりしないのかなぁ」
「今のところ、そういう話はないみたいだけど……でも、本当に誰かいいひとを見つけられたらいいのにね。いつまでも私に構ってるんじゃダメなのに」

〝奈央ちゃんがいい〟なんて言っているうちは、過去の傷が癒えない証拠だ。

幸いにも、郁巳くんはキラキラした世界にいるんだし、見た目も心も綺麗なひとを早く見つけられたらいいのに。
そう思いながら呟くと、真美ちゃんが「でもさ」とニヤニヤしながら言う。

「そんなことになっちゃったら、奈央、寂しくなっちゃうね」

それは……どうなんだろう。
すぐには答えがでなくて、返す言葉が見つからない。

でも、郁巳くんだって私だって、恋人を見つけたほうがいいに決まってる。
今の、幼なじみとも呼べないような歪な関係は、お互いにとってよくないハズだ。

「寂しくならないように、私も誰か探さないとかもね」

いざとなったとき、郁巳くんの周りにはたくさんの女の子がいるだろうけれど、私は違う。

しかも、恋愛にあまり興味がなくて今まで何も経験なくきちゃってるし、郁巳くんの心配ばかりしている場合じゃないのかもしれない。

……だからといって、焦る気にもならないけれど。それは性格だから仕方ない。

「お、やっとそんな気になったんだ! 奈央と恋愛話とかできたら楽しそうだし、誰かいい人紹介してあげよっか?」

高校の頃から、〝彼氏を作れ〟ってうるさかった真美ちゃんが乗り気で言うから、「そのうちね」と苦笑いで誤魔化すと、口を尖らされる。

「奈央はそうやってすぐ誤魔化すー。〝そのうちね〟って言われ続けてもう六年目なんですけど……あ、そうだ」


< 22 / 94 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop