過保護な彼に愛されすぎてます。
「奈央ちゃん、鍵、開いてたよ。外に出るならちゃんと戸締りしないと」
「ごめん。かけたつもりだったんだけど……」
「いつも言うけど、これで何回目だか覚えてる?」
う……と思いながら、目を逸らす。
正直に白状すると、鍵をかけ忘れたのはこれで三回目だ。
きちんとかけたつもりなのに、なぜかかけ忘れていて、それを郁巳くんに発見され怒られるのが三回目。
でも、それ以外ではかけ忘れたことはないから、かけ忘れたのはその三回だけで、たまたま郁巳くんに発見されたってことになる。
これだけの頻度で遊びにきていたら、それも無理はないことかもしれない。
「仕事終わって帰ってきて昼飯食べてから遊びに来たら、鍵は開いてるし、奈央ちゃんはいないし。空き巣にでも入られたらどうすんの?」
「でも、たった数分……」
「空き巣にでも入られたらどうすんの?」
「ごめんなさい」
目を伏せ謝ると、郁巳くんはやれやれとでも言いたそうにため息を落としたあと「気を付けてね」と柔らかい声で言う。
視線を上げると、優しく微笑んだ郁巳くんが頭を撫でた。
「ところで、お説教してるときから思ってたんだけど、その髪どうしたの?」
部屋に入って、キッチンで麦茶を入れていると、郁巳くんが隣に並びながら聞く。
「ああ……えっと、真美ちゃんって覚えてる? 高校のとき、同じクラスだったんだけど」
「あー……なんとなくなら。奈央ちゃんが仲良かった子だよね。たしか、こないだサインがどうのって言ってた子もその子じゃなかったっけ?」
「あ、うん。そう。さっき、そのサインを受け取りに真美ちゃんがきてたんだけどね、そのときに結んでくれたの。
そのドーナツも真美ちゃんが持ってきてくれたやつ」
普段、掃除のときくらいしか髪を結ばないから、郁巳くんの前ではほとんど下ろしっぱなしだ。
だからか、珍しそうにじっと見てくる郁巳くんが「ふぅん」と言いながら、ポニーテールの髪先に触れる。