過保護な彼に愛されすぎてます。


「このシュシュは?」
「さすがモデルだね。シュシュなんて普通、男の人は知らなそうなのに」
「まぁね。で、このシュシュはどうしたの? もらった?」

いつもの郁巳くんだったら〝まぁね! 俺、これでも結構人気のあるモデルだし、オシャレには詳しいよ〟とか、機嫌よく話し出しそうなものなのに……。

そっけなく『まぁね』とだけ言った郁巳くんを不思議に思いながら「うん」と答えた。
真顔のままの郁巳くんの指が、ゆっくりと髪を辿ってシュシュに触れる。

「――これ、奈央ちゃんの趣味じゃないのに。全然わかってないな」

声を潜めて言われ、瞬間的に言葉を呑んだ。

ピリッと張りつめたように感じる空気に、ただ郁巳くんを見上げていることしかできなかった。

表情のない、郁巳くんの顔。シュシュを見定めたままの瞳には冷たさしか浮かんでいない。

息苦しさを感じるほど重たい空気にどうしていいのかわからなくなっていると、郁巳くんはゆっくりと視線を移し、私を見る。
そして、安心させるように、その瞳をにこりと細めた。

「夏だし、こうしてまとめてるのも可愛いね。ポニーテール、よく似合ってる」
「……本当?」

今、本当にそんなことを考えてたの? あんな怖い顔して?
じっと見上げながらやっとの思いで聞いた私に、郁巳くんが笑う。

「本当本当。もちろん、髪下ろしてるいつもの奈央ちゃんもすげー可愛いけどね」

さっきまでの空気をかきけすような明るい声と表情が、雰囲気を和らげる。

意図的なのかどうか、探ろうとして見つめる先で、郁巳くんがいつもみたいに軽い調子で言う。





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