過保護な彼に愛されすぎてます。
「なにがいい? 奈央ちゃんの好きなもの作りたい」
キラキラしている笑顔が、低血圧の私にはまぶしくて、思わず眉間にシワが寄っていた。
「いらない。別々でいいよ」
「ええー、やだ、一緒がいい」
駄々をこねるように言った郁巳くんが、横から私の頭を抱き寄せてグリグリと自分の頬を押し付けてくる。
郁巳くんがスキンシップが多いのは、いつものことだ。
だからグリグリされても気にせずトーストを食べていると、そのうちに髪の匂いをクンクンとかきはじめて「はー、俺、奈央ちゃんのシャンプーの匂いすき」とか煌々とした声でつぶやくから、鳥肌が立つ。
ぶるりとしながら、郁巳くんの顎を手で容赦なく押しのけた。
頭の上で「ぅぐ……っ」とくぐもった声が聞こえるけど自業自得だ。気にしない。
「やめて。気持ち悪い」
「冷たいっ」
「今のを嫌がらない子なんて頭のねじ飛んでると思うけど。あとたぶん、郁巳くんのねじは十本単位で足りてない」
「じゃあ、足りないぶんは、奈央ちゃんがおぎなって」
めげずににっこりと笑いかけてくるモデルを半目で睨みつけ、ため息を落とした。
「話が通じなくて、朝からストレス……」
「それなら、俺が癒してあげる。得意分野だから」
「モデルスマイルで解決することなんて、まずない」
まだ近い距離にあるキラキラした笑顔をさっきよりも強く押しのけると、郁巳くんは「えー、カメラマンには褒められるのに」と、肩を落とし口を尖らせる。