過保護な彼に愛されすぎてます。
「奈央ちゃんがあまりに塩対応するからかもね。
奈央ちゃんって、心許したひとには基本的にそっけない態度とりがちだから。俺とか俺とか……それとか、俺とか」
「俺しかいなかったけど」
「まぁ、俺は奈央ちゃんのそういうところも好きだから全然構わないんだけど。だってなんか、ああ、俺の前では自分の素を出してくれてるんだなーって思うと、それってすげー幸せだなって思うし、事実、奈央ちゃんが冷たくするのっておじさんとおばさんと俺相手のときくらいだし、それって暗に俺を家族同然と――」
「語り始めた……」
明るい声と笑顔で語られ、げんなりとしながらため息をついた。
郁巳くんは、体力どうなってるの……って聞きたくなるほどにいつでも元気だ。
部活はサッカーをしていたし、大学に入ってからもテニスサークルに入って身体を動かしているから、そんな元気なんだろう。
モデルを始めてから、体型維持のため、時間を見つけてはジョギングしたり筋トレしたりしているのも、体力がついた理由かもしれない。
プロ意識があって、すごいと思う。
でも、そんな活気に溢れる郁巳くんの相手をするのはつかれるっていうのが正直なところだ。
スロースターターの私としては、せめて午前中は勘弁してほしい。
私だって、中学高校って短距離走の選手で県大会でもそこそこの成績だったのに、今やそんな体力はどこを探しても見当たらない。
人間、ちゃんと続けていないと一瞬で転がり落ちてしまうものなんだなと思い知る。
「エアコンつけたかったらつけていいよ」
掃除を始める前に開けた窓。
まだ九時だし、そこまで暑くはないから、普通だったら窓を開けて過ごすけれど、郁巳くんには暑いかもしれない。