過保護な彼に愛されすぎてます。


「たしかに、奈央ちゃんは派手な色って自分じゃ選ばないもんね。赤もだけど、ピンクとかオレンジとか水色とか。
きっと似合うから、俺が選んでいっぱいプレゼントするね」

郁巳くんが、私の手のひらにシュシュを乗せる。
手元に戻ってきた、真美ちゃんからもらったシュシュに、安堵の息をつく。

心臓は、まだ少しドクドクとうるさかった。

「どうせなら時間かけて選びたいし、服とかも見立てたいから、一日オフの日にしよ」
「うん」

にこにこと、すっかり機嫌が直った様子で言う郁巳くんが「シュシュとかは気分とか服装によって毎日変えられるから、十二色買ってもいいよね。それか、二十四色とか」と明るく言う。

さっき感じた狂気のようなものは、私の勘違いだったのかって思うほどの切り替えに内心動揺しながら「十二色とか、クレヨンみたい」と言うと、うしろから抱きついてきた郁巳くんが笑う。

「奈央ちゃんが俺の買ってあげたシュシュ見ながら毎日迷うとか、考えただけで顔がにやける」

いつも通りの郁巳くんに、ため息を落としながら口を開く。

心臓はもう、落ち着いていた。

「にやけた顔なら、わりといつもしてるけど」
「えー、仕事では真面目な顔もいいって評判いいのになー」

耳元でぶーぶー言う郁巳くんを引きずりながら、洗面所の横にある引き出しを開ける。
櫛やゴム、ピンなんかが置いてあるそこの一番奥に、真美ちゃんからもらったシュシュを入れ、パタンとしめた。


首に、軽く回されただけの腕。
そこには全然体重なんてかけられていないのに……なんでこんなにも重たく感じるんだろう。



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