過保護な彼に愛されすぎてます。
five
なんとなく、視線を感じるなって思い始めたのは、二週間ほど前からだった。
マンションに出入りするときに、不意に誰かに見られているような、そのへんに人の気配を感じるような、そんな気持ちになるときがある。
私が住んでいるマンションは、自動ドアをくぐってすぐにエントランスがあり、そこにポストが並んでいる。
普通の人が暮らすマンションだ。防犯カメラがついているくらいで、セキュリティーが厳しいわけじゃない。
誰でも部屋の前まではこられる造りになっている。
視線を感じるのは、マンション前だけで、マンション内で気付いたことはないから、そこまで心配する必要もないんだろうけど……。
なんとなく、気持ち悪いな、と思わずにはいられない。でも、郁巳くんに言ったら必要以上にうるさそうだな、と思い、とくには報告せずに過ごしていた。
それがどういう意味合いのこもった視線なのか、思わぬ形で知ることになったのは、日曜日の午後。
郁巳くんと一緒に出掛けているときだった。
「奈央ちゃん! 今日急にオフになったからシュシュと服、選びに行こう!」
朝八時半。眠い目をこすりながら玄関を開けるなり言われて、リアクションもできずにぼーっとしていると。
郁巳くんは「ほら早く。俺が朝ごはん作るから、その間に顔洗ってきて」と私をクルリと方向転換させてから背中を押した。
ご機嫌な様子の郁巳くんが作ってくれた、苺ジャムとバターの乗ったホットケーキを食べていると、先に食べ終わった郁巳くんが私のクローゼットを勝手に開け、服を選びだす。
それから「奈央ちゃん、今日はこれで俺とデートして」と、一枚のワンピースを持ってきた。
郁巳くんが選んだのは、白いタンクトップワンピース。胸元が割と大きく開いているものだ。
「胸元が不安だから、一応下に黒いキャミ……んー、ボーダーのタンクの方がいいかな。
で、上にはこれ羽織って」