過保護な彼に愛されすぎてます。
ボーダーのタンクトップと、半袖のジャケットがソファの上に置かれる。
ジャケットは、薄いデニム生地のもので、色は水色に近い。
いつか、郁巳くんが〝絶対似あうから!〟って強引に買ってくれたものだけど、実際、結構使っている。
やっぱり、モデルをしているだけあって、郁巳くんはセンスがいいし、そこに加え、シンプルを好む私の性格を熟知してくれているから、服選びは正直助かっている。
「せっかくだから、髪まとめよっか。俺がいじるから、奈央ちゃんはごはん食べてていいよ」
私がゆっくりとホットケーキを食べるうしろで献身的に動き回る郁巳くんがおかしくなる。
「なんか、モデルの疑似体験してるみたい」ともらすと、郁巳くんは嬉しそうに「じゃあ、俺専属のモデルね」と笑った。
「そういえば今度、ドラマ出ることになった。吸血鬼役だって」
髪を触りながら言われた言葉に「え、すごいね」と驚いて言うと、郁巳くんは「チョイ役だけどね」と軽く笑う。
「台詞も、全部合わせても十行ない程度だし、事務所は嫌ならいいって言っててさ。
でも、もしこのままこの世界にいるようなら、俳優も選択肢に入れといた方がいいし。とりあえずやってみることにした」
「……なんか、郁巳くんもちゃんと考えてるんだなってびっくりした」
「えー? 俺だってそれなりに考えてるよー。まぁ、衣装さんとかメイクさんとかカメラさんとか、マネージャーとかには〝なにも考えてなさそう〟って言われるけど」
「それ、全員だよね」とツッコむと、郁巳くんが楽しそうに笑う。
「まぁ、そこが俺の魅力、みたいな。見てるひとみんなに元気を振りまく俺!みたいな」
「じゃあ、吸血鬼になるには魅力消さないとなんだ」
吸血鬼だし、炭酸水のCMみたいに、郁巳くんのにぎやかさが伝わっちゃダメなんだろうと思い言うと、後ろで郁巳くんが「あー……そっかー。俺の魅力がー……」と肩を落とす。