過保護な彼に愛されすぎてます。


「でもまぁ、たしかに吸血鬼の役作りってわかんないんだよなー。ミステリアスな感じっていうのは、なんとなくわかるけど。
あとは、ぞくっとさせるような眼差しとか? 俺、血とか好きじゃないし。血飲んでうまいみたいなの、よくわかんない」

「それはみんなそうだと思う」
「あー、でも奈央ちゃんのなら吸ってみてもいい……」
「今すぐ出て行って欲しい」
「嘘だって。冗談冗談」

郁巳くんが、話しながら左の耳下でひとつにまとめてくれた髪を縛るのは、白いリボンのシュシュ。

二週間前、郁巳くんがくれたものだ。

あれから、怖いな……と思うことはない。
でも……なんとなく、だからといって郁巳くんのなかから、そういう部分がなくなったわけではないんだろうなとは感じていた。

郁巳くんの気に障るようなことを、私がしていないってだけなんだろう。

『あいつの束縛具合はおかしい。坂井に対するそれは、幼なじみにするもんじゃないだろ。
つーか、恋人相手でも人によっちゃ許されない範囲まで達してる』

いつか、吉原さんが言っていたことが頭をよぎる。

ずっと、なんとなくおかしい気もするけど……まぁ、いいか、と見過ごしてきたことを、最近、スルーすることができなくなった。

積み重なってきた〝あれ?〟って引っ掛かりは今では山ほどあって、見ない振りなんてできないほどだ。


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