過保護な彼に愛されすぎてます。
「だいたい、もう二十二歳になるのにずっと一緒っておかしいでしょ」
ショックを隠そうともしないで、しょんぼりとする姿は、雑誌をにぎわせている、モデル不破郁巳と同一人物なのかと疑問になるほど。
苺ジャムをぬったトーストを食べ進めながら様子を眺めていると、落ち込んでいる郁巳くんがチラッと私を見る。
心なしか、目がうるんで見えて、もう二十超えた男のくせに……と呆れてしまう。
「だって、放っておいたら奈央ちゃん適当なモンで済ますじゃん。料理のひとつもろくにできないから」
「ひどい侮辱を受けた」
「いや、奈央ちゃんが料理できなくても、そんなの俺がいくらでもするから問題はないよ。
ただ、インスタントとかは身体によくないって話」
「でも、郁巳くん仕事なんでしょ? 大学行きながらモデルの仕事なんて、それだけで大変なのに、毎日毎日、私の夕飯まで作ってもらうなんて悪い……」
そこまで言った途端、郁巳くんの顔がぱぁっと明るくなった。
その浮き沈みの激しさに目をパシパシとさせていると、笑顔全開の郁巳くんが言う。
「なんだ。奈央ちゃん、俺の心配してくれてたの? 嬉しいけど、そんなの気にしなくていいのに」
「心配もするでしょ。最近郁巳くん、モデルの仕事忙しそうだし、たまにはひとりでゆっくり……」
「だーめ」と、私の言葉にかぶせるように言った郁巳くんが、微笑んで、私の唇を人差し指で押さえる。
柔らかい声色だった。
きっと、こんなキラキラした笑顔と優しい声を向けられたら、黄色い悲鳴を上げるような子がそこらじゅうにたくさんいると思う。
熱狂的なファンなら卒倒しているところかもしれない。
そう思えるほど、郁巳くんの表情も声も、魅力に溢れていて、それは底を見せない。
二十年もずっと一緒にいる私が見ても、うっかり見とれてしまうほどに綺麗だ。