過保護な彼に愛されすぎてます。
「奈央ちゃんの気の強いところは好きだよ。でも、あんなふうに犯人をひとりで追いかけるのは危ないからもうやめてね。
俺、見失ってすげー焦ったんだから。奈央ちゃんがスマホ持ってたからよかったけど」
公園を出て、カフェでお昼をすませ、シュシュやら服を買った帰り道。
郁巳くんの小言はとどまることを知らなかった。
たしかに危ないことをした自覚はあるだけに、黙って聞いていたけど……本当にしつこい。
「中学のころもさ、一度あったじゃん。俺を好きだとかいう子が奈央ちゃんを呼び出して、また奈央ちゃんが果敢に立ち向かうもんだから、相手がヒートアップしたこと」
はぁ……とため息をついた郁巳くんに、そのときのことを思い出す。
学年でも派手なグループにいた子に呼び出されたことがあった。
『あんたなんかにつきまとわれて不破くんが可哀想っ』
『もう学校にこないで!』
なんて、的外れで理不尽なことを言われて頬を叩かれたから、速攻で叩き返したら、相手の子が泣いちゃって双方の親を呼び出しての話し合いになった。
『どうせアナタがなにかしたんでしょう!』って決めてかかってくる相手の母親。
『私は悪くありません。先に手を出したのはそっちです』って言い通していたら、カッとなった相手の母親に同じところを引っぱたかれる……ということがあった。
『親子そろって、すぐ手が出るんですね』と淡々と言ったら、相手もハッとしたみたいで、それ以上こじれなかったからよかったけど。
先生の目が合った手前、そうしなきゃマズイと思ったのか、相手方が謝ってきたから。
そういえば、話し合いを終えて教室を出たとき、廊下で待っていた郁巳くんは私を見るなりこの世の終わりみたいな顔してたなぁと思う。
だいぶ腫れてたから、それを心配してのことだったんだろう。