過保護な彼に愛されすぎてます。
four


手のひらの傷も無事かさぶたになった、翌週木曜日。

食堂の入口でたまたま一緒になった吉原さんを、強引に向かいの席に座らせた。

いつもどおり、十四時近い食堂は、人が少ない。
吉原さんの前にも私の前にも、A定食のよくばりオムライスが並んでいた。

「え。〝郁巳くんの私に向けられる好意が女としてかもしれない〟とか、今さら言ってんのか?」

信じられない!とでも言いたそうに眉間にシワを寄せられて「はい」とうなづいた。
吉原さんはオムライスにスプーンをさしながら「いや、だから」と、呆れた様子で言う。

「こないだ話したときにも言っただろ。不破の執着は恋人とかそれ以上の存在に向けられるもんだって。
聞いてなかったのか?」

「いえ。聞いてたんですけど……だって、まさかそんな風に考えないじゃないですか。郁巳くんの周りには、綺麗なひとがたくさんいるのに、そのなかで私を……その、そういう対象で見るなんて」

なんとなく、幼なじみとしてはおかしいなと思うことはあった。
でもそれも、郁巳くんのトラウマからくる依存のせいだと思っていたし、郁巳くんがまさか本気で私を……なんて考えたこともなかった。

大体、恋愛感情ってもっと違う気もするし……郁巳くんのあれは、あてはまらないんじゃないかとも思う。

でも。

『俺はもう、奈央ちゃんしかいらないって言わなかったっけ?』

『ただ、そろそろ覚悟決めてね。あんまり待たされると、俺、なにするかわからないよ』

日曜日にそう言われて、初めてその可能性が頭をよぎって……それから、もしかして、と思ってしまった。

うぬぼれすぎだとも思ったのに、〝もしかして〟は消えなくて、もんもんとしていた時、吉原さんを見つけて捕まえたってわけだった。


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