過保護な彼に愛されすぎてます。
「坂井って、案外、鈍感なんだな」
スプーンを口に運びながらハッキリと言う吉原さんが「不破と坂井のやりとり見てきたヤツなら、全員気付いてるのに」と続ける。
「本当に今まで気付かなかったのか?」と聞かれ、スプーンでオムライスをつつきながら答えた。
「幼なじみって関係には収まってないような気がしたことは何度もあります。
でも、郁巳くんの依存体質のせいもあるし。ちょっと他の人が怖くなって拠り所が私しかなくなっちゃったっていう、消去法みたいな感じに思ってたんです。
そこに、おかしな依存はあっても恋愛感情はないって思ってました」
「でも、実際はそうじゃなかったってことなんだろ? 大体にしてあいつ、他人が怖いとか、もうないと思うけど?」
「え……」
思わず声をもらすと、吉原さんは水を飲みながら言う。
「高校んときだって、俺は、あいつが対人恐怖症とかその類だって感じたことは一度もなかった。
むしろあいつは人懐っこいから、部員とは自分から打ち解けてたし。女子相手にだっていつもヘラヘラしてたろ」
「それは、郁巳くんが世渡りがうまくなったっていうか……うまくこなせる術を身につけたっていうか……。
多少、治った部分はあると思いますけど、気を張って無理してただけで……」
私の言葉を、吉原さんは「いや、違うだろ、あれは」と苦笑いで遮った。
「だって、他人が怖いヤツがあんなにハッキリ物言うわけないし。
不破、坂井が絡むと平気でズケズケ物言うだろ。相手が女子だろうが男子だろうが。
人間が怖かったら、あんな風に波風立てるような言い方は選ばないだろ。見て見ぬふりするのが普通だと思う」