過保護な彼に愛されすぎてます。
『女って、本当にくだらないよね。俺の価値が~とか、俺が迷惑してる~とか。
そんなもん、俺が決めることでアンタらが言うことじゃねぇってわかんねーの? だとしたら相当イタイね』
『それさ、誰が名前で呼んでいいって言った? 馴れ馴れしいの、俺嫌いなんだよね。それでも穏便にすませたいから放っておいたけど、挙句、調子に乗って奈央ちゃんにひどいこと言うんだから呆れる。
……奈央ちゃんに他の男紹介するだとか言った口、原形留めないくらいぐちゃぐちゃにしてやりたい』
『アンタさぁ、俺が好きなんだろ? だったら嬉しいよね。毎日飽きもせず追い回すくらい大好きな俺に殴ってもらえて』
波風立てるような言い方……と聞いて、郁巳くんの言葉がポンポンと頭に浮かぶ。
ああいう言葉は、ただ単に、他人を蔑んでるのかと思っていた。
やっぱりくだらないって、落胆して言ってるんだろうなって。
だから、そういうひどい言葉を聞くたびに、郁巳くんはまだ他人が嫌いなんだって、傷は塞がらないんだなって悲しく思ってきたけど……。
言われてみればたしかに、吉原さんの言う通りかもしれない。
他人が怖いなら……最初から〝人間なんて〟って諦めているなら、わざわざ自分からつっかかっていくことない。
それに、相手は郁巳くんに想いを寄せている人だ。郁巳くんが、もっとも苦手とする人。
それをわかった上であんな風にハッキリと対峙するなんて、他人を苦手とする郁巳くんにできること……?
私を庇ってくれようとしたとしても、必要以上に相手を傷つけて、注目を集めるような行為をする必要なんてない。
そこまで考えて、あれ?と思う。
だったら、なんであんな注目を浴びるモデルなんてOKしたんだろう。
CMにだって……。
好意が乗せられた視線が怖いって言ってたのに、矛盾してる。